yuichi0613's diary

yuichi0613の雑記、写真、日々の記録。

「貨幣の社会学 経済社会学への招待」(森元孝)読んだよ

たぶん今日あたりから[感想]を増やしていくつもり。
前段、一人暮らしの話をしたが、通勤時間の短縮、過程の変更とともに、積ん読の解消が至上命題としてある。あ、あと洋書の英訳とまったく手をつけてない研究のカタつけるってのもあるな。

さて、本書は本屋で衝動買いして早半年。
実際、社会ってカネで動いてんじゃん?というところから「貨幣」への一定の興味があり、半ば勢いで買ってみた。

本書は、04年度からの早稲田大学第一文学部の著者の講義内容をもとに編集されている。プロフィールみると、1955年生まれ、現在は早稲田大学文学学術院文化構想学部(社会構築論係)教授、とある。長いな。専門は理論社会学と社会理論。
理論畑のひとだから、経済と社会学を遊離せずに思考できているのかもしれない。

全体の流れとしては、前半に「日本の経済について、とくに高度経済成長の設計とバブルやその崩壊の諸要因について、貨幣循環のプロセスのシステムを例に説明」し、後半は「それをもとに一般論についての説明と、今後の貨幣と社会との関係についてアイディアを提示」する。

経済社会学への招待、とあるのでどうかと思っていたが、なかなか楽しく読めた。入門書、とあるだけにさらにつきつめたい人には各講の巻末にあるコラムで参考図書等がしめされている。
私は未熟なので無理だが、第6講の「貨幣と共同体」などはじっくり研究してみる価値はありそう。

なかでも、高度経済成長と長期信用銀行の役割はとても興味深かった。
金融債、がキーワードだ。
銀行は昔もそして現在も、完全に政府の制御下にある企業にある。
高度経済成長に向けて、庶民は働いたお金を郵便局に預ける。政府は郵便貯金に集められた巨額なお金を、財政投融資として長期信用銀行金融債を購入、さらに長銀はそれを国の重要産業に投資し、その産業が大きな利益を生み、長銀に利息をつけて返済、庶民も稼ぎをさらに貯金して財政投融資が拡大するという「資金循環システム」が1970年代まで成立していた。

このシステムが機能していた間は、長銀も都市銀行も安定して利益をあげられたし、国としても重要産業の成長につながるし、知らずに国民も豊かになってゆく。ああなるほど、計画的ね、と。

また、その「守られた」産業が、いまこうして守られなくなった産業の同時遭難をひきおこしたのではとも書いている。

あと、この金融債に著者、かなりこだわりがある。額面で交換価値を表示しておきながら無記名であるこの紙切れはほとんど貨幣と同様で、本文中、何度か「政治家にとって賄賂などに使い勝手がよかったに違いない」と書いている。そんなに面白い話を知っているのか。

個人的には、貨幣のメディア性についてもう少し説明がほしかった。初読のときはけっこう唐突で、貨幣=メディアという概念に抵抗があり、なかなかしっくりこなかった。まあもう一回見返したら、ただ貨幣自体に価値はあるかの話なのだが、馴染めなかった。



出版もとの東信堂ははじめて聞いた。他の書籍も巻末に書いてあったが、えらくカタそうでまた読んで見ようと思う。