いま思いかえしたら、線香のけむりは辛気臭いから止めろって言われそうだな。
すみません。
山々を染める紅葉に、黄色い落ち葉に、地面に落ちた小さなどんぐりに囲まれながら、富士の裾野に眠ってるんだなあ。
簡潔な墓碑銘。
黒く刻まれた名前。
会いに来たけど、当然会えなかった。
雲におおわれた空は黙っている。
そのまま座り込んで空想をめぐらせた。
線香のけむりの行方に、目をこらす。
当たり前だ、なにも起きなかった。
僕はこのままでいいんですかね。
尋ねたけれど、当然答えはなかった。
立ち上がる。
背を向ける。
日が差した。
少しだけ。