yuichi0613's diary

yuichi0613の雑記、写真、日々の記録。

『ボーイズオンザラン』花沢健吾

読んでいて久しぶりに心が熱くなったマンガ。
私は「アホの一念、岩をも通す」話が好きらしい。

ボーイズ・オン・ザ・ラン 10 (ビッグコミックス)

ボーイズ・オン・ザ・ラン 10 (ビッグコミックス)

『ボーイズオンザラン』は2005年から3年間『ビックコミックスピリッツ』に連載されていた。
このたび近所のレンタル屋で半額セールのときに借りてきたのだが、もともと花沢氏の絵柄といい、駄目男の出てくる話といい、好みっぽかったのでチャンスがあれば読みたいと思っていた。

(以下、ネタバレありですので、駄目な方は読まないでください)

ざっくり言うと、中途半端なへタレが、仕事、恋愛、ボクシングを通して成長していくストーリー。
話を分けるとしたら、2つになるだろう。
最初のパートが、1〜50話のへタレ主人公・田西敏行(逆から読むと…)、植村ちはる、青山貴博の恋愛、寝取られ、堕胎までの話。
ここまでが5巻。
そして50〜115話までの田西、ハナ、宍戸修(シューマイ)が、「家族」になるまでの話。
以上の10巻。
個人的には、終盤の展開が急だと思った。田西がボクシングで成功するような伏線(初めてサンドバッグに向かったときの右ストレート、源が田西に『いい肩してんな』とかその他)が何度か張られていたので、おそらくもう少し続いていたら違った側面からのエンディングになっていたのではと思う。

「挫折をしたことがない。挫折をする前に逃げるからだ」と言ってのける主人公の田西が、逃げて逃げて、女の子の前ではがんばってみて、空回りして、失敗して、負け続けて、駄目だアホだと言われながらも走り続けた先には「本気になれるものが」あった。
それがボクシングだったり、ハナという好きな女を守るだったり、最終話で前科もちになりながらも修の人生を守るということであった。エピローグ、修が十二分に成長し、おそらく数年後に源や田西(口だけだが)が目指しても手にできなかった世界チャンプの座をとることで、田西の「本気」、ハナの本気も報われるのだろう。

通読して思ったのが、(1)他人の心への過敏さ=自分への自信のなさ、(2)シューマイ、影の主人公、ということだ。

自分もあるのでちょっと忌々しいのだけど、田西やちはるの、なんというか人の心に対して過敏というか、過度に距離を持とうとしてしまうところが、この物語の被害者、ちはるの歯車をぐるぐると狂わせたのだなあと思った。
他人の心に対し、正面からぶつかり、しかと触れたことがないゆえの他者存在の不理解。
相手の言葉、心を絶対のものとして受け取り、自分を抑えてしまう性分。嫌われたくないからという理由付け。まあこれは自分への自身のなさの現われでもあるのだけど。

これがあるために、田西はちはるの対峙な場面で一歩、前に出ることができなかったし、ちはるは青山に嫌われまいと何でも希望通りにやって一身に尽くした。

「たまには大事なひとを怒らせてごらんよ」B'z『STAY GREEN』(私はB'zの曲をすぐ思い出すくせがある)

いや、ほんとそうで、相手のいいとこばっか見ててもつまんないじゃん。というか、いいとこばっか見てたいと思うと、相手にとって都合いいだけじゃん、と。
もともと青山くんは「隣の芝の青さ」に惹かれただけで、好きになるはずはなく、いろいろと尽くせば尽くすほど相手からはうとまれる。
一方、一身に尽くしているのに、日に日に冷たくなっていく相手の態度に、不安になり、さらに尽くす。その繰り返し。そして悪循環。

かわうそうに。
と思うけど、自分が選んだ道だしね。

まあ、恋愛に盲目につっぱしるこの性格は、すれてしまった長野時代のちはるにも備わっているみたいで、のちのちが怖い。
ってか、ちはるちゃん、メンヘルになっていたのがなあ。はあ。人の気をひくための自傷、過去の話を都合よく改ざんする、性に対する垣根の低さ。自分の人生をだめにした男に復讐してやろうってのは、まさに執念。
どんだけ作者、ちはるが嫌いなんだと思っていたら、ネット上に作者のインタビューでこういうのがあった。
以下、引用。

コミダス2006年7月6日付け”花沢健吾インタビューその1 非モテよ立ち上がれ!『ボーイズ・オン・ザ・ラン』”(参照=http://blog.excite.co.jp/mangaword/5197375

ちなみにこのインタビュー、コミックスでいうと3巻とかあたりの時点のはず。

――ほとんどの読者が田西とちはるの不器用な恋愛話だと思ってるのでは。たしかに、ヒロインにしてはちはるの扱いはヒドすぎると思ってましたが……。

花沢:なんでだろう。なんでだろうなあ……。可愛さ余って憎さ百倍というか、最近この手のタイプの女性がすごく嫌いなんですよ。以前はすごく好きだったんですけど……。それでですねえ、そういう女をやっつけたいと。

――やっつけたい?

花沢:苛めたい。できればもうちょっと追い込んでいきたいなとは思うんですが……。まだまだ甘いな、と。

――ちはるをこういうキャラにすることは連載前の時点で決めていたんでしょうか?

花沢:嫌なキャラというか……。勘違いさせる女性がいたんですね。それはまあ、自分の、本当、単純な勘違いなんで、その女性にはまったく罪はないんですけど、それでも、なんか……なんだろうなあ、まあ……悔しいというか……。

――無自覚に周囲をかき回す、みたいな?

花沢:まあその、八方美人というか。誰にでも好感を持たれるような、人が……いまして……(無言)……(無言)……。

――ちはるって女の子はそれまでに男性経験がなくて、恋愛の経験値でいえば低いわけですよね。

花沢:それがねえ……なんでしょう、だから……どういうのが経験値が高いっていうかわからないんですけど、なんだかなあ、無自覚なんですけど、うーん……、男を自在に振り回せるというか……。

このあと、他に話題がうつる。
作者の悪感情、おそるべし。

さて、話は変わってふたつめの件。
シューマイ先輩にはいろいろ思うところがあるけどまあ、萎えた。

今日はもう寝ます。

PS
オーパルパル、これ読んだあとだったらなあ。先日、韓国行ったときに訪れたかった。