yuichi0613's diary

yuichi0613の雑記、写真、日々の記録。

『ツカサネット新聞』について<2>/創刊当時:理念、川又三智彦社長のインタビューなどを交えて

今回もツカサネット新聞について。同紙は11月末で休止を発表した。


前回の記事はこちら。
ツカサネット新聞』について<1>/簡単な年表
http://d.hatena.ne.jp/yuichi0613/20091112/1257970206


続けて市民メディア『ツカサネット新聞』創刊の理念を記事や社長のインタビューなどを交えて紐解いてみる。


とりあえずなんか論文あるだろとCiNiiを調べたが見当たらなかった。残念。
現在、ネットで閲覧できるものは数少ないが、創刊前後、2005年7月あたりの最初期の記事や情報となると、以下の運営社プレスリリースとITmediaの記事がある。

参考資料==
@Pressプレスリース
(2005a年5月17日)”発信したい情報・出来事を投稿することができる『ツカサネット新聞』 Blog感覚でニュース発信”
http://www.atpress.ne.jp/view/2927

(2005b年7月7日)”Blog感覚の『ツカサネット新聞』7月20日プレオープン”
http://www.atpress.ne.jp/view/3147

(2005c年9月1日)”自宅の庭先から総選挙まで。 あらゆるジャンルの情報発信『ツカサネット新聞』”
http://www.atpress.ne.jp/view/3374

(2005d年9月16日)”今までとは違う「ネット新聞」 「噂の『ツカサネット新聞』DX」 9月22日プレオープン”
http://www.atpress.ne.jp/view/3458

(2006年2月13日)”’投稿→討論に参加!誰でも稼げるネット新聞’ あのツカサネット新聞がリニューアル。 ますます便利&楽しくなるツカサのホームページ”
http://www.atpress.ne.jp/view/4023

(11月13日閲覧)


ツカサネット新聞とは


これについては、プレスリリース(2005a)に詳しい。
以下に引用する。

ツカサ都心開発株式会社(東京都品川区、代表:川又 三智彦、以下ツカサ)
は、ネット新聞開局にともない『ツカサネット新聞記者』を募集致します。

ツカサネット新聞は全ての登録ユーザ(ネット記者)がニュースを発信できる
インターネット上の総合メディアです。

新聞開設が始めてプレスリリース上に出る日付けのもの。文章の初めに、サイト開設に伴って市民記者を募集している。ここで、一般の市民が記者を勤めるいわゆる「市民メディア」形式の新聞であることを宣言している。


テーマについては特定の分野に限らずに、「総合メディア」という書き方をしている。記事カテゴリと同義だろうか、ニュースの項目は、「最新ニュース、ニュース特集、経済、生活、地域、社会、スポーツ、エンターテイメント、政治、写真ニュース、今日のコラム、川又 三智彦の経済情報(一部動画配信)」を想定していたようだ。


市民記者像については後段、「Blog感覚で記者の皆様の周りで起こっている気になる事柄・事件・事象などのニュースを」「友人に話す要領で」「朝食のメニューから世界経済まで、ジャンル・内容は問わず記者の皆様が発信したい情報・出来事を投稿する」ことを勧めている。
その視点は、「ミニマムな生の声も歓迎します。」としている通り、質を求めるよりも、生活者の目線を大事にした記事を求めている。それを「皆様の個性溢れる独自のジャーナリズム」という表現をしている。

また、「記事を作成すると記者にポイントが加算され還元するシステムを予定」という報奨制を予定している。リリース(2005b)には、「ポイント数は記事の内容により異なりますが、金額に換算するとおよそ1,000円から10,000円」と書いている。

また、記者登録については、「登録無料でどなたでも記者になることができます」、「弊社ホームページからツカサネット新聞「記者規約」をご覧頂き、その内容に同意が出来る方であれば、日本や海外などの居住地や人種を問わず、『ツカサネット新聞』の記者になることが出来ます」、「記者登録の申し込みはインターネット上ですべて行う事が可能です。」となっている。なお、同サービスについての説明会の告知もしている。

市民記者の登録状況について、プレオープンから1カ月強のリリース(2005c)時には、「現在、一日に20数本の記事投稿と5人前後の記者登録があり、海外の登録者も含め、既に260人を超えています」とある。また、今まで反響(コメントへの投稿)の大きかった記事として、

JRAにモノ申す 「それでも続けますか不公正競馬を」 8月26日(金)掲載
http://www.222.co.jp/netnews/read_article.aspx?csn=3&asn=318

・医師もホストクラブで修行すれば……        8月17月(水)掲載
http://www.222.co.jp/netnews/read_article.aspx?csn=6&asn=203

・寝る前に装着し、起きるとはずす。そんなコンタクトレンズがある。
                          8月29日(月)掲載
http://www.222.co.jp/netnews/read_article.aspx?csn=6&asn=364

・平気で遅刻をするな! 時間の大切さをもっと考えて 8月19月(金)掲載
 http://www.222.co.jp/netnews/read_article.aspx?csn=6&asn=219

を挙げている。

リリース(2006)公表時には、サイトのリニューアルが告知され、「投稿がとてもしやすく、どなたでも掲載する事ができるようになりました。そして記事が掲載されると○100円○が支払われます。反響が特に多い場合は<ボーナス!>も追加される仕組みになっています」となった。記事掲載の還元として、格段に値段が下がっているが、これは想定よりも費用対効果が低かったため、下方修正したということだろうか。


サービスを始めた理由、狙い/社長のインタビュー記事から


では、サービスを始めた理由、狙いとは一体なんだったんだろう。
以下の川又三智彦社長のインタビュー記事を参考にする。

ITmedia(2005/05/30)”「にゃんにゃんにゃん、てんこてんジェイピー」のツカサがネット企業に?”
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0505/30/news038.html


まず読んで感じるのは、不動産会社でありながらのネット事業への意欲だ。
リリース(2005a)にもあったが、元々社長はインターネット上で「情報整理術」というものを2004年から続けており、その発展形としてネット新聞がある。この新聞開設前後に「オフィスやマンション物件の詳細な情報をネットで公開。家賃を競売にかけるネットオークションや、同社のオフィス入居者向けにPR用Webサイトを構築するサービス」もしており、BlogやSNSに参入もしている。

「同社にとってネット事業は広告手段。単体で収益をあげる必要がないため、多様なサービスを試せる」という風に、新聞単体での利益化をとりあえず度外視して、あくまで広告媒体としてのメディアを開設したということだ。

広告手段としてネットを選んだ理由は、高価なテレビ広告費にある。「同社はバブル期、広告宣伝費を年間8億円かけていたが、今は2億円にまで減らした。しかし、広告を見て同社に問い合わせする人は逆に増えたという。「ネット経由の問い合わせが、電話によるものより圧倒的に多い」(川又社長)。テレビでURLを宣伝し、サイトに誘導するという戦略が当たったという」。ここのあたりは、今のテレビCMを鑑みるに、とても先見の明があるのは間違いない。「テレビCM費用を当時の5分の1くらいまで減らし、最終的には、広告宣伝を5000万円程度に抑える」考えを示した。


しかし悩みとして、「サイトへのアクセスが同社の認知度につながらないこと」であり、そのための起爆剤として「ネット新聞」と「出会い系」を開設する、ということだ。

ツカサネット新聞については、「ネット新聞『オーマイニュース』の日本版的位置づけを目指す」と話している。また、大手新聞が事実しか書かないことを問題視し、その点、うわさも含めた主観を掲載することで、事実だけの報道からは見えなかった“真実”をあぶりだしたいという思いをもって「『噂の真相』のネット版にしたい」という意気込みも語っている。

5月30日時点で「パブリックジャーナリスト(編注:この記事では市民記者と同義)は、新聞広告などで募集した。全国紙の記者経験者など、100人以上の応募があったという。記者は直接雇用したり、外部ライターとして出来高払いで働いてもらう予定」となっている。


まとめ


ここまで、創刊当時の川又社長のインタビュー記事やプレスリリースを元にツカサネット新聞の創刊の理念や新聞としての形態、市民記者像などを見てきた。


ここまでの内容でまとめるとすれば、一般的なネット・メディアと違う点と言えば、収入についてであろう。
一般的なネット・メディアと言えば、良質な記事を掲載し、多くのユーザーを集めてそこに広告をはさむことで金銭を稼いできた。しかしながら、特徴的なのは新聞も含むこれらネット事業をあくまで「広告手段」として捉えることで、「単体で収益をあげる必要がない」とある種、つき離して事業を展開することができた点である。おそらく本業としての不動産と、副業としてのネット事業という住み分けを図ったのだろう。たしかにテレビなどへの広告費を削って、その分に自社メディアでの広告展開兼技術への先行投資がうまくまわれば、その選択は間違っていないと言える。

また、市民記者像については、いわゆる「生活者目線」の記事を求めるとしている。これは、大手新聞紙が「事実しか書かないこと」へのアンチテーゼとして、「うわさも含めた主観を掲載することで、事実だけの報道からは見えなかった“真実”をあぶりだしたいという思い」からこの様な記事の要望となったのだろう。
しかし、いま時点から見るに、この「主観的記事」というある種当たり前の記事観が(「記事に客観的は在り得ない」という意味で)、市民メディアへの目線を冷たくしたことを鑑みるに、スタート時点でのつまづきがあったのではと感じる。




次は最近まで一気に時間を戻して、休刊間際のツカサネット新聞を見ようと思う。