yuichi0613's diary

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日本新聞業界の現状は?その2 社会の変化、若者の新聞離れ

yuichi0613的日本の新聞業界の現状その2。
総務省の資料を見ると、若者(20代〜30代くらい)の「新聞離れ」、そしてPCの普及はかなりの深度だと実感できますね。
それではどうぞ。

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第2項 新聞を巡る社会の変化、若者の新聞離れ

新聞が直面している問題は、必ずしも部数や広告の話だけではない。

社会の変化も重要な問題であり、河内は2007年の著書で、こうした社会の変化について「人口が減少に転じ、世帯数も頭打ち。三〇代以下の多くは新聞を読まなくなった。インターネット、携帯電話の時代は、自分の望む時間と場所で最新ニュースが得られる。首都圏を中心に地下鉄や主要ターミナルではニュースもコンパクトに載っているフリーペーパーが何種類も配られ、人気が上がっている。*1 」と端的に指摘している。
この指摘に従って、論を進めていく。


進む人口減少、2055年には1/4が減少

人口減少については、国立社会保障・人口問題研究所の人口推計*2 によると、合計特殊出生率の中位仮定である1.26を採用する場合、日本の人口は2005年の1億2,777万人から、2030年に1億1522万人、そして2055年には8,993万人となる推定をしている。
この仮定のまま進めば、50年後には人口はいまの約4分の3になる。こうなると、現在のような経済規模や社会の維持は困難になるだろう。


若者は新聞、テレビからPCへ

若者の新聞離れについてはどうだろうか。
日本新聞協会の2007年の調査*3 を参考にすると「新聞へ接触している人の割合」が全体で92.3%、1週間に平均5.4日朝刊に接触し、毎日接触している人の割合も66.5%である。
また、年代別で見ても、20歳代83.1%、30歳代88.9%、それ以上の世代は96%前後の接触をしていると結果が出ている。
しかし、これは1日に1回でも接触すれば反映される調査であるので、次はNHK放送文化研究所の調査*4 を参考にする。
2005年と多少古いデータではあるが、新聞の行為者率、つまり新聞に接触する国民全体の割合は45%前後で、1日20分程度の接触時間である。
また、高齢者の行為者率の高さが目立つ一方、「土曜・日曜の行為者率をみると、男女とも20〜40代、職業別にみると勤め人の行為者率の低下が大きく、社会の中核層で新聞ばなれが進行している*5 」と、20〜40代の新聞離れが見られる旨の報告をまとめている。


また、次に示す総務省の資料では、新聞への接触頻度と利用時間についてまとめられている。便宜上、パソコンの利用についても図で触れている。




図14メディア利用機会と1日当たり平均利用時間:新聞、パソコン
(出典:「情報通信白書 平成20年版」より*6


この図14によると、「ほとんど毎日」および「週3〜4回利用」が約60%と、他の層と比べて格段に利用率が低い。
「利用していない」グループも10%程度いる。
また、1日当たりの平均利用時間も14.2分とこれも他と比べて短い。
こうした若年層のあきらかな新聞離れが見られる。
加えて、若年層においてはパソコンの利用が「ほとんど毎日」および「週3〜4回利用」で90%程度と、新聞で言う高齢者の利用率並みに利用が行われていることが見て取れる。


また、次の図15では、若年層がここ2〜3年で主要4媒体であるテレビ、新聞、雑誌、テレビの利用からパソコンや携帯電話の利用に移ったことが示されている。
若者の「新聞離れ」は、新聞を読まなくなった、読む時間が少なくなったというだけでは十分な理解ではない。
つまり、若年層がこれまで主要4媒体に割いてきた時間を、パソコンや携帯といった新しいメディアの利用に時間を多く割くようになってきたということ、言い換えると、メディア間での利用時間競争が起きており、その勝負に主要4媒体は負けているということである。




図 15 ここ2〜3年間のメディア利用の頻度の変化
(「増えた」との回答の割合から「減った」との回答の割合を引いた値)
(出典:「情報通信白書 平成20年版」より*7


フリー・ペーパー

その他の社会の変化として、例えば、フリー・ペーパーの普及については、現状ではいわゆる欧米で流行っているような無料日刊紙は日本で成功をしていないが、主要駅などで手に入るものとしてグルメやクーポン情報としてリクルートの「ホットペッパー」、若年層向けのビジネス紙「R25」などは最も人気があるフリー・ペーパーのひとつである。
その他、地域誌や求人、大学情報誌や既存メディアが発行するフリー・ペーパーなどもあり、今後も様々な形で広がっていくだろう 。


佐々木俊尚氏の「コンテンツ論」

また、インターネット社会におけるコンテンツのあり方を考察している佐々木俊尚の著作では、いま起きているマス・メディアの危機は構造的な問題であるとして、① マス・メディアの「マス」が消滅し始めている、② メディアのプラットフォーム(基盤)化が進んでいる、の2点を挙げている*8 。前者は、みんなが同じものを消費する「大衆」の時代から、人が自分の好みにしたがって行動する「少衆・分衆」の時代がきていると示唆している。
後者は、Google及川卓也氏が主張する説明を援用して、メディアの情報伝達を「コンテンツ」(=例えば記事)、「コンテナ」(=記事を運ぶ容器)、「コンベヤ」(=容器のコンテナを配達するシステム)であると仮定した場合に、これからの時代は「コンテナ」を握った企業が基盤となり、コンテンツをユーザーとどのように接触させるかをコントロールできるようになるとしている*9
例えば、インターネットの現在の状況で言えば、

コンテンツ=新聞記事
コンテナ =Yahoo!ニュース、検索サイト、2ちゃんねる
コンベア=インターネット

という構造になっており、このうちYahoo!や検索サイトなどが「プラットフォーマー」となり、コンテンツに対する影響力は今後さらに力を増すようになると述べている。



※これまでの記事

アメリカ新聞業界の危機
その1 発行部数、広告費の推移
その2 経営危機への対応
その3 サイト無料化と有料化―『NYTimes』とマードック氏
その4 「ジャーナリズムの未来」は「新聞の未来」なのか?
その5 新しいジャーナリズムの出現


日本新聞業界の現状は?
その1 発行部数と広告費の推移
その2 社会の変化、新聞離れ
その3 経営悪化に対応する新聞社
その4 新しいメディア主体の不在

*1:河内孝(2009)『新聞社 破綻したビジネスモデル』新潮社、p.33。

*2:国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成18年12月推計)―平成18(2006)年〜平成67(2055)年―」、http://www.ipss.go.jp/pp-newest/j/newest03/newest03.pdf

*3:日本新聞協会「2007年全国メディア接触・評価調査」 p.15、http://www.pressnet.or.jp/adarc/data/rep/img/2008.pdf

*4:NHK放送文化研究所「2005年国民生活時間調査報告書」pp.16-17、http://www.nhk.or.jp/bunken/research/life/life_20060210.pdf

*5:NHK放送文化研究所、前掲、p.16。

*6:総務省「情報通信白書 平成20年版」p.94、http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h20/pdf/20honpen.pdf

*7:総務省「情報通信白書 平成20年版」p.96、http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h20/pdf/20honpen.pdf

*8:佐々木俊尚(2009)『2011年新聞テレビ消滅』文春新書、p.20。

*9:佐々木、前掲、pp.48-50。