yuichi0613's diary

yuichi0613の雑記、写真、日々の記録。

2010年度の新聞協会賞はこんな感じ

昨日かな?今年度の新聞協会賞が発表された。
ちなみに新聞協会賞というのは、社団法人日本新聞協会が新聞協会加盟社からの自薦をうけて、すぐれた報道に対して顕彰するもの。
9月2日付け 毎日.jp”新聞協会賞:編集部門など7件を発表 10年度”
http://mainichi.jp/select/today/news/20100902k0000m040098000c.html

《編集部門》

  • 読売新聞東京本社(吉田清久・前政治部次長)「核密約文書 佐藤元首相邸に 日米首脳『合意議事録』存在、初の確認」の特報
  • 共同通信社岩崎稔・中国総局記者)「北朝鮮の金正日総書記、4年ぶり訪中」の特報写真
  • 日本放送協会(山口大純・前報道局映像センター映像取材部)「奇跡の生還〜転覆漁船からの救出の瞬間」の特報映像
  • 信濃毎日新聞社(「認知症−長寿社会」取材班、代表=五十嵐裕・編集局報道部次長)「笑顔のままで 認知症−長寿社会」の連載企画など

《経営・業務部門》

  • 日本経済新聞社(代表=喜多恒雄社長)日本経済新聞電子版(Web刊)の創刊
  • 高知新聞社(代表=宮田速雄社長)郷土の命 見守り続け〜「赤ちゃん会」80回の実践〜

《技術部門》

  • 日刊スポーツ新聞社、日刊スポーツ新聞西日本(代表=山中俊幸・編集制作センター副センター長)東阪統合組版システム

「核密約」「北朝鮮、金正日」「海の事故」「高齢者問題」というキーワード。
「《経営・業務部門》」の「日経新聞電子版創刊」もたしかに新聞業界としては注目すべき点だった。

受賞作へのコメントは以下になっている。
http://www.pressnet.or.jp/about/commendation/kyoukai/works.html

編集部門
「核密約文書 佐藤元首相邸に 日米首脳『合意議事録』存在、初の確認」のスクープ


読売新聞東京本社
編集局医療情報部次長(前政治部次長)吉田 清久

授賞理由
読売新聞東京本社は、沖縄返還交渉をめぐり昭和44年に、佐藤栄作首相とニクソン米大統領との間で交わされた有事の核持ち込みに関する合意文書が、佐藤氏の遺族のもとに保管されていたことを突き止め、その写しを入手し全文和訳を添えて、平成21年12月22日付夕刊1面で特報した。
核持ち込みに関する密約に関しては、報道各社の長年にわたる追跡取材と元外務官僚などの証言により、周知の事実となっていたものの、政府が一貫して文書の存在を否定してきた中で、決定的な証拠を示し、日米両国の首脳が核持ち込みに合意していた事実を明らかにした。
日米安全保障問題において秘匿されていた歴史の一端を解明したこの特報は、日本の戦後史、現代史にとって第一級の史料を発掘した、歴史的に意義の大きなスクープとして高く評価され、新聞協会賞に値する。

吉田 清久(よしだ・きよひさ)=昭和36年4月3日生まれ。昭和62年読売新聞社入社、東北総局、地方部、読売ウイークリー編集部、政治部を経て、平成21年政治部次長。平成22年5月から現職。

確認したら、この報道は昨年のものだった。
「核密約」が話題の今年だからこその受賞か。

「北朝鮮の金正日総書記、4年ぶり訪中」のスクープ写真


共同通信社
中国総局 岩崎 稔
授賞理由
共同通信社は、厳戒態勢が敷かれた中国・大連のホテルで、北朝鮮の金正日総書記が4年ぶりに訪中した姿を撮影し、平成22年5月3日に配信した。
核問題をめぐる6か国協議再開のめどが立たず、韓国海軍哨戒艦沈没への関与説が強まる中、健康悪化が表面化してから初めての外遊に向かった金総書記の表情を、格好のポジションから一瞬のタイミングを逃さず、鮮明にとらえた。
世界中が注目する金総書記の素顔をとらえたスクープは、外電にも転電され各国のメディアが使用するなど、世界的にも価値の高いニュース写真として高く評価され、新聞協会賞に値する。

岩崎 稔(いわさき・みのる)=昭和49年9月14日生まれ。平成18年12月共同通信中国総局と写真記者契約。

顔を捉えて、外電でも使用されたのが大きいか。
該当のものは、この金氏の横顔写真のはず。
http://sankei.jp.msn.com/photos/world/korea/100503/kor1005031939004-p3.htm

奇跡の生還〜転覆漁船からの救出の瞬間


日本放送協会
アジア総局(前報道局映像センター映像取材部) 山口 大純
授賞理由
日本放送協会は、八丈島近海で消息を絶っていた漁船「第一幸福丸」の乗組員8人のうち3人が、4日ぶりに奇跡的に救出される瞬間を撮影し、平成21年10月28日午後1時のニュースでいち早く報じた。
報道各社の取材が集中する中、転覆した漁船の船尾付近の空間を撮影し続けた勘の良さ、撮影と現場レポートを同時に行いながら映像を伝送し、すぐ放送に結びつけた手際の良さなど、カメラマンの取材力と冷静な判断力が、スクープ映像に結び付いた。
生存が絶望視される中、映像メディアの特性を遺憾なく発揮し、海中から浮かび上がってくる生存者の姿を的確にとらえた映像はニュース性が高く、多くの人に衝撃と感動を与えた報道として高く評価され、新聞協会賞に値する。

山口 大純(やまぐち・ひろすみ)=昭和48年11月22日生まれ。平成9年日本放送協会入局、佐賀放送局、広島放送局を経て、平成17年報道局映像取材部、平成22年7月から現職。

「生存が絶望視される中、映像メディアの特性を遺憾なく発揮し、海中から浮かび上がってくる生存者の姿を的確にとらえた映像はニュース性が高く…」が受賞理由。
決定的瞬間をとらえた、ということだろう。

「笑顔のままで 認知症―長寿社会」(連載企画、関連特集、関連記事などのキャンペーン)


信濃毎日新聞社
「認知症―長寿社会」取材班(代表)編集局報道部次長 五十嵐 裕
授賞理由
信濃毎日新聞社は、介護保険制度10年という節目に、長寿社会の普遍的なテーマである認知症を取り上げ、認知症の現実と問題点、具体的な解決策を提示するキャンペーンを、平成22年1月3日から6月29日まで、77回にわたる連載企画と関連特集などで重層的に展開した。
介護の負担が重く、症状への偏見も根強い中、患者とその家族、介護職員や医療現場などを多角的に取材、アンケート調査を交えながら問題点を浮き彫りにし、認知症が特別な病気ではなく、誰にでも起こり得るものであり、社会や地域が一緒に支え合うべき問題であるというメッセージを強く訴えた。
実名報道に徹した取材手法と平易な文章で紹介した連載企画は、認知症に対する価値観を転換させ、読者に共感と勇気を与えたキャンペーン報道として高く評価され、新聞協会賞に値する。

五十嵐 裕(いがらし・ゆたか)=昭和39年6月26日生まれ。昭和63年信濃毎日新聞社入社、本社報道部、松本本社報道部などを経て、平成19年4月から現職。
経営・業務部門

実名報道に徹した取材手法と平易な文章で紹介した連載企画は、認知症に対する価値観を転換させ、読者に共感と勇気を与えたキャンペーン報道として高く評価され、新聞協会賞に値する」。
ちなみにこちらのブログ(http://blogs.yahoo.co.jp/konc/6383852.html)によると、今年中に講談社から書籍化されることのこと。

最後に。

日本経済新聞 電子版」(Web刊)の創刊


日本経済新聞社
(代表)代表取締役社長 喜多 恒雄

授賞理由
日本経済新聞社は、会員制、有料課金方式の新たなインターネット媒体「日本経済新聞 電子版」を平成22年3月23日に創刊した。同電子版は、新聞掲載記事や独自のコンテンツを提供するほか、デジタル媒体の特性を生かし、読者の興味・関心に合った記事を表示するなどのカスタマイズ機能を持った「My日経」等も搭載する。
紙の新聞との共存を前提にしつつ、新たな読者市場の開拓も視野に入れた意欲的なプロジェクトであり、新聞界がデジタル分野でのビジネスモデルを模索する中、ネット時代の言論報道と新聞経営の在り方についてひとつの道筋を示した。
創刊からわずかな期間しかたっていないものの、他社に先駆けて有料電子版モデルを提示し、新しい新聞の形を実現したことは、先進性や独創性に加え、企業価値向上の面からも高く評価され、新聞協会賞に値する。

喜多 恒雄(きた・つねお)=昭和21年11月16日生まれ。昭和46年4月日本経済新聞社入社、東京本社編集局総務、出版局長、常務取締役社長室長、代表取締役専務経営企画・広報・リスク管理・コンプライアンス担当などを経て平成20年3月から現職。

先日、有料・無料合わせて50万人を超えたという。
http://www.nikkei.com/topic/20100830.html

ただ単に有料制による収入を得るだけでなく、このページの図にあるように、マーケティング的には会員の属性を把握できていることが大変大きい。
「どんな人にどれくらい届くのか」というのは、こういう会員制度じゃないと把握が難しい。
そして、それを把握することが、シビアになっている企業広告への魅力となる。
というところでしょうか。


過去の受賞作はこちらから。
http://www.pressnet.or.jp/info/hyosho/kyokaisyozyusyo.htm

ちなみに信濃毎日の「笑顔のままで」は、JCJ(日本ジャーナリスト会議)が顕彰しているJCJ賞も受賞している。
http://jcj-daily.sakura.ne.jp/jcjsho10.htm
http://www.shinmai.co.jp/news/20100815/KT100814FTI090002000022.htm

==

他にジャーナリズム系の賞といえば。
早稲田大学が顕彰している「石橋湛山記念ジャーナリズム大賞」
http://www.waseda.jp/jp/global/guide/award/
10月初旬発表。

あとは、新聞労連が出している「新聞労連ジャーナリスト大賞」あたりか。
http://www.shinbunroren.or.jp/

==

今年、アメリカのピュリッツァー賞では、非営利組織のネットメディア「Propublica(プロパブリカ)」がネット系として初受賞するジャーナリズムとしては画期的なことが起きた。
けど、いまの日本の状況では当分先だろうなあ。