yuichi0613's diary

yuichi0613の雑記、写真、日々の記録。

「有料課金の影響はわずか」とジャーナリズム・オンラインによる報告

有料化による閲覧者の低下の影響が恐れられていたことは、
一時期、欧米で「Pay Wall(有料の壁)」と表現されていたことでもわかる。
これについては、このブログでも触れている

先駆け的に有料化を行ったアメリカの新聞社サイト『ニューズ・デイ』について。

『Newsday.com』の事例を見てみる。ニールセンの調査データによると、ユニーク・ユーザー数が無料期間の10月に210万人であったのが、有料化に踏み切った11月には170万人と21%の減少にとどまった

元記事はこちら

さらに。
有料会員数がどれくらい増えたかということについて、驚くことに。

有料化のためにサイトの再デザインに400万ドル(約4憶円)かけたのに、3カ月で新規有料読者は35人だったという。ネタ元はThe New York Observer。

 The New York Observerによると、ニューヨークのロングアイランドの地元紙のNewsdayは10月下旬にウェブサイトを有料化し、週5ドル、もしくは年260 ドルの購読料を支払う会員にしかアクセスできないようにした。これまでに約9000ドルの売り上げを達成したのだとか。もちろん紙の読者は無料でアクセスできるらしいけど、それにしても少な過ぎないか。
米Newsday紙、有料化でなんと35人読者ゲット! : TechWave


「サイト有料化の影響は大きい」

そう思っていたyuichi0613ですが、どうやら違っていたとする意見が。
ジャーナリズム・オンライン(以下、JO)によるものです。


共同の1月19日付け記事 有料化でウェブ読者減は最大7% 米紙の代行企業 - 47NEWS
(※元記事の翻訳なので全文を引用、もし問題があれば指摘を。)

新聞社ウェブサイトのニュース有料化を支援し料金徴収を代行する米企業ジャーナリズム・オンラインは、同社と提携する各新聞社のウェブサイトについて、有料化後の利用者の減少率が最大で7%にとどまったことを明らかにした。米紙ニューヨーク・タイムズが18日報じた。同紙は、有料化先行紙で激減例があることを念頭に「(有料化の影響は)軽微」とした。

 ジャーナリズム・オンラインが昨年開始したサービスに参加している約20紙の数字をまとめた。読者数の減少に比べ、延べ閲覧回数の減少はばらつきが大きく0〜20%。一方、広告収入に影響はなかった。
有料化でウェブ読者減は最大7% 米紙の代行企業 - 47NEWS

さて。
NYTの元の記事はこちら。
Journalism Online Examines Pay Model - NYTimes.com

もちろん共同の記事は短すぎ。
NYTが対象メディアが20紙程度と、かなり少ないことなどを挙げて、注意を促しているのに比べて、共同の記事はJOの主張のみを紹介しているからだ。

NYTはこう記事に書いている。

L. Gordon Crovitz, a former Wall Street Journal publisher who is helping run the project, said one lesson to be taken from the numbers so far is that readers were willing to pay for some, but not all, content online. Consumers “will pay for the few news brands they really rely on, if they use them a lot,” he said.
Journalism Online Examines Pay Model - NYTimes.com

意訳*1すると、
「このプロジェクトにも関わったクロビッツ氏は、オンライン・コンテンツにおカネを払おうと言う現在の消費者の数について、ひとつの教訓を得た。
それは、消費者は『たとえ、多くのニュースサイトを使っていたとしても、本当に信頼を置いているニュース・ブランドにしかお金を払わない』ということだ。」

※追記1.27 この和訳については、@whimsical_bon さんからのご指摘で、①the numbersの対象、②if they use them a lotのif節の二箇所を修正する予定です。

私は、この言葉に説得力のほうを感じてしまう。

なお、余談としてこのあと、NYTの記事は本紙の有料化にも触れるのだが、他のマイコミの記事によると、課金システムや月額課金代についてかなり慎重に設定を詰めているらしい(参考)。
(この話題はまた稿を改めてまとめたい。)



さて。
このコンテンツ課金代行ビジネスの「ジャーナリズム・オンライン」だが、気になるところ。
公式のサイトはここでいいんだろうか。

どのようなサービスなのかについて、マイコミ・ジャーナルで河内考氏が連載中の、こちらで同社のクロビッツ氏インタビューが行われている。
【コラム】メディアの革命 (51) 新聞社の救世主か? コンテンツ課金代行ビジネス「Journalism Online」 | ネット | マイコミジャーナル

ビジネスモデルはこんな感じ。

同社のビジネスモデルは加盟社のニュース・コンテンツを集合したプラットフォームをJOが作る。JOサイトを訪問した読者が選択したコンテンツ閲読のために支払った料金の20%をJOが取り、クレジット手数料3%を引いた77%がコンテンツを提供側の新聞社、雑誌社の収入となるというものだ。

また、採算についてはかなり強気で、

加盟の意思表示をしている1,300社のオンライン・ユーザーを合計すると月間1億3,500万人にも達するから、このうち10%が年間100ドル支払う有料読者になれば十分採算がとれる、というわけだ。

としている。

コンテンツ課金のモデルはいくつか用意されている。上記から引用してみる。

確かに同社が提供する15種類もの記事課金システムは、きめ細かで様々なニーズに対応できるよう苦心の跡がうかがえる。以下、いくつかの課金パターンを紹介してみよう。

1.無料で読めるコンテンツを月20本程度として、あとは従量制(メーター制ともいう)で増えていく一種のフリーミアム・モデル。最初の数行を無料で公開して、その先を読むためには課金する方式もフリーミアムの一種である。

2.新聞紙の定期購読者に電子版を安く提供する方式。これは部数を維持しながら時間をかけてデジタル有料制に移行するのに有効という。4月からの日経電子新聞モデルの先行タイプといえよう。

3.個々の読みたい記事に少額課金するマイクロペイメント制

4.特定の項目、分野に限って提供する方式

5.電子版の定期購読。これは定額制だからメーター制より「いくらで収まるか目安がつけやすい」というメリットがある。

こういった課金システムを、新聞社に提案し、有料化をすすめるというビジネスモデルだそうだ。
先述のNYTの「対象メディア」の数が20ほどだったことを考えると、当初の想定よりは利用する会社が少なそうである。

新しいビジネスとして、この分野は、私も興味をもっているので、
今度、もう少し詳しく調べてみようかなあ。

*1:意味が違う場合はご指摘いただけると助かります。