今週号の「アイアムアヒーロー」(花沢健吾)
1月25日発売の8号の感想。
「自分がすがるものは確かか?」
※ネタバレ含む。
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すでに焦燥状態の英雄。
遊園地の跡地らしき場所にあった、トンネルに逃げ込むと疲れのために睡魔が襲う。
カラーの扉絵には、暗いトンネルの通路でへたり込みながら眠る英雄と、3mはあろうかという大きな「蛾」。
あまりの大きさに起きた英雄はびびって叫び声をあげるが、次の瞬間には消えている。
恐怖が作り出した幻覚か。
長く寝てしまったことを悔みながら、なるたけ人がいない方向へ進もうとする。
大きな道路に沿って歩いていくと、ふと大事にティッシュにくるんでいたてっこの抜けた歯をなくしてしまう。
「てっこ、ごめんな…」
歩いていくと、選択肢
先は樹海。
大きな道路に沿って、車や人に見つかるリスクを負うか、樹海へと逃げ込んで人からさらに逃げるか。
二つの間でせめぎあいながらも、英雄は樹海を選び、歩みをすすめる。
孤独な行軍。
あてのない道。
携帯は圏外。
森は暗闇に閉ざされ、怪しげな物音が辺りに響く。
恐怖が支配する空間。
たった一人で立ち向かう森の迷路で、英雄は手にした銃を胸に抱きながら、前のめりにへたり込む。
「アイ アム ア ヒーロー…」
うわごとのようにつぶやく英雄。
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街中のゾンビから逃げて、樹海に迷いこむ英雄。
これまではゾンビというたしかな敵が目の前に存在し、また、感染していない人間の仲間もいたにはいた。
しかし、トンネルで長時間経過。
情報の途絶。
最愛のてっこの偶像を無くしてしまったことによる依存関係の不在。
そして樹海へ迷い込み極度の緊張状態に陥っている。
ここまで来ると、自身の内面との戦い。
てっきり私は、銃はゾンビを打ち倒すものだと考えていたが、ここに至って、「自分の人生に終止符を打つ」ことができるものに見えてきた。
「アイアムアヒーロー」と叫ぶ英雄、自身を支えに生きるという決断ができればいいが。