女川町のこと
正直に言うと。
あまりの現実感のなさに、ちょっと思考が止まった。
悲しくならなかった。
石巻の沿岸部と違い、まだガレキが残り撤去作業のショベルカーがゴトンゴトンと大きな音を建てていたのに。
対象がいなかったからなんだろう。
想像力がないのだろう。
けっきょくは、私はこの土地の者ではない、ということだ。
これが限界。
いかに、震災直後から地道に支援を続けるあるボランティアの人に「女川を見たら、泣き崩れる人もいる」と言われようと。
360度、まわり何もないお寺の近く、倒れた墓石を前に一心にてを合わせる家族連れを遠目に見ながら。
石巻を一緒に回ってくれた人に、「ここにはたくさんの家があった。たくさんの人が住んでいたんだ」と言われようと。
現実感がなかった。
想像力がなかった。
今日、Google mapで女川町を見てみたら、かつてあった街並みを見ることができた。
その街並みのなかに、「丸正旅館」の文字を見つけた。
建物は取り壊され基礎だけが残る街並みの間、整備されていない道を海のほうに向かうと、津波を受けてなお残る数少ない建物。
街並みが、あんなになってしまうのか。
そこには人がいて、生活が営まれていた。
ガレキの街には、そうしたにおいがなかった。
ただ、海の潮のにおいと、命の最後のにおいしかしなかった。
だから、その場は平気でいられた。
想像力がなかった。
Google mapを見て、初めて泣けた。
その街で消えた命を想って、泣いた。